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名探偵バウちゃん!

23:59



1_BFROUC



師走。

師と仰ぐものですら走らなければならないぐらい忙しい、この年の瀬の季節。
そんな世間一般の例に漏れず、私『卯月遥』も多忙な毎日を送っているのですが……






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そんな私は今、物凄く頭を抱えていました。

机の脇に積み上げられた資料や課題、処理案件などには目もくれず、ただひたすらに頭を抱えるのみ。
一分一秒も惜しい人間の行動にしては些か不信とも言えるその行動は、
予想外の、いえ、本来は予想しておいてしかるべきではあったのですが、
とある案件につきっきりにならざるを得ないという状況を如実に物語ってもいました。


手の中には、小さい紙。
そしてその中に書かれた、サンタさんへという稚拙な文字。



 「すっかり忘れてた……」



後悔ともとれる呟きを、誰に聞かすともなく吐き出します。


そう。

私にはかけがえのない、家族と呼べる存在がいます。
ネコマタ桃の卯月さくら。水色クローラーの水陸両用
ルルイエのあまえんぼハートのティラミス。プルル・アルマのみずな
そして、バウ・アルマの『マロン』

まだ幼いマロンに、夢や希望を持たせるため。
しいては、彼女たちの笑顔を垣間見たいと思ったため。
去年私は、紆余屈折を経て、
マロンやさくらに「サンタクロースからのプレゼント」を渡しました。


言い換えるならば、サンタクロースという存在を知らなかったマロンに、
サンタクロースという存在を信じ込ませた、のです。


信じ込ませたのならば、当然今年も「サンタへ願う」のは必然であったといえるでしょう。





 「どうしよう、もう準備期間もないし、それに……」



ため息と共に、もう一度掌の中の紙へ目を落とします。
その中には、

サンタさんへ
ボクは 「たんてい」に なりたいです!



いつぞやに聞かせていた、「イリスと記憶の書架」における希少本盗難未遂事件の話。
その話がよほど心に響いたのでしょうか。
幼い彼女の無垢なる願いが、切説と書かれていました。



 「どーすりゃいいのこれ……」











 「……………………よし、もうこの方法しかない!」



もうどれだけ思考に耽っていたのか分からないほど思考に耽っていた私は、
ようやく顔を上げ、気合を込めて吐き捨てます。
そして自室に備え付けられてある電話の受話器を取り上げると……



 「おはようございますー。突然すいません、ちょっとお聞きしたいのですが」

 「……さんって、……をお持ちじゃないですよね?」

 「デスヨネー(笑)」

 「あ、ちなみに、お知り合いに……をお持ちの方は…………」











名探偵マロン



卯月家の日常、この企画は
卯月遥とその家族達の、平凡とは名ばかりの逸脱した日常を、SS風味で書き連ねてゆきます。
SSに耐性のない方は、他の記事へと避難して頂けると幸いです。

いつもの如く、クリスマス企画です。
お暇な方はお付き合いくだされば幸いです。









そんなやり取りがあった後。
ご主人は私「卯月さくら」をはじめとする、マロン以外の家族を一堂に集めました。



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 「ご主人、マロンの件はどうにか片が付きそう?」

 「何とかね。もちろん、皆にも協力してもらうことになるけれど」

 「まあ協力くらいはいつでも良いけど、去年あんなことをしたのにそれを覚えてないってどうなのご主人……」



いつもの如く、リビングにみずなちゃんのお小言が飛び交います。
ただ、今回ばかりはそのお小言も良く効くようで、
この時期は忙しいんだから、といつもの如くティラミスさんがフォローするも、ご主人はバツが悪そうにしていました。

いつもは話半分に聞き流すご主人がしおらしくしている姿というのは幾分珍しくて、
これはこれで眺めているのも面白いかも。
そんなことすら思っていたのですが、このままではいつまで経っても話が進まないので、
水陸が「みゅぅ……」とため息をついたところで、それとなく話を本題へと戻します。



 「で、今年はいったいどうするのご主人?」

 「ん、あ、うん。前回あんな大がかりなことをしちゃったし、
  去年は越せないまでも、反省も含めてちょっと本腰を入れてみたよ」

 「本腰?」

 「うん、本腰」

 「なんですか本腰って」



そうみずなさんが聞くと、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりのドヤ顔になったご主人は、
わざわざ呼吸を止めて一秒、真剣な顔をしながら言い放ちました。








 「みんな、温泉行こうか!!」







…………。

……………………。




 「「「えええっ!?」」」






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 「というわけで、温泉に行くことにしましたマロンさん!!」

 「おんせん!?おんせんってなんですかご主人様!?」

 「温泉っていうのは、簡単に言えば凄いお風呂だね!!」

 「わふー!マロンお風呂大好きです!おんせんたのしみです!!」



打ち合わせや準備を念入りにした後。
善は急げと、私たちは今回の主役にも温泉へ行く旨を伝えることにしました。

当の本人マロンは、降ってわいたお出かけの話に大はしゃぎ。



 「マロン、雪が降ってるところに行くからね!雪だるまとかたくさん作ってもいいよ!」

 「わふーーー!」

 「夕飯も素敵な郷土料理が出るんだって!!」

 「わふーーー!キョウドリョウリですーーー!
  よく分からないですがおいしそうですーーーー!!」



さすがご主人、マロンの扱いはお手の物、と言った所でしょうか。
日程の関係ですぐに出立ということもあり、ご主人はこれでもかというぐらいマロンを興奮させます。
この姿を見てるだけでも、なんだか癒されちゃうなあ……。
そんな風に思っていると、マロンがぴたりと動きを止めました。



 「あれ?でもボクは楽しいですが、ご主人様も「おんせん」に行くんですか?
  ご主人様忙しいのに大丈夫ですか?」



ご主人が来なければ楽しさも半減。そういわんばかりにちょっと悲しそうな顔をするマロンに対し、
私は打ち合わせ通りの解答を述べます。



 「えっとね、ご主人はちょっと原稿が煮詰まっちゃって、気分転換をしたかったんだって。
  で、そんな時に丁度ノーザンでひっそりとやってる温泉宿の、無料宿泊券が当たったんだって。
  かなり枚数あるみたいだから、
  お礼も兼ねてご主人が普段お世話になっている人達も誘ったりすれば一石二鳥でしょ?」

 「そうですか!ご主人様も来れるですか!!」

 「ふ、温泉マニアの私が目の前にぶら下げられた温泉に食いつかないわけがなかろう!」

 「ご主人、向こうで仕事ホントに出来ますか……?」



凄く感じた不安感を思わず口にしたところで、丁度飛空庭のエレベーターが動いた音がしました。






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 「お邪魔しま~す!」

 「お、来た来た、いらっしゃーい!」

 「さくらも久しぶりー!今回は呼んでくれてありがとー!」

 「……話が急過ぎて、準備が大変だった……」



私たちに明るく話しかけてくる和服の方と、
その横でちょっとふてくされ気味の黒いコートの方。
そして初対面のピンクの服の方の3人が、私たちの家にやってきました。
そんな来客の人たちに「まあまあ、宿泊券が今日明日一杯だったから仕方ないじゃない」と、
これまた打ち合わせ通りの解答をしつつ対応したご主人は、一拍置いて、



 「さくらはあれだけど、マロンは多分全員初対面だよね?」

 「は、はいです。知らない人はちょっと緊張します」

 「私よりも数段できた人たちばかりだから心配ないよ」



と、来客の紹介を始めます。



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 「まず、向かって一番左の和服娘が『キリカ』ちゃん。
  普段ブログの看板娘兼、一コーナーでナビゲーターもしてもらってる人だね」

 「初めまして、よろしくねマロンちゃん!」

 「は、はいです、よろしくおねがいしますです」

 「あはは、固くならなくても良いのに!」



 「次に中央のゴスロリ娘……あ、着替えてきたんだ?」

 「……だって、寒いし」

 「うん、そうだね……というか今気づいたけど、むしろキリカちゃんのほうがその格好でいいの?」

 「あ、私は後で着替えるよー。というか急いできちゃったから武器も持ったままだし!」

 「なら大丈夫かな?
  あ、途切れちゃったけど、普段ゴスロリな『チルハ』ちゃんね。
  こちらも普段ブログの看板娘兼、プラス一コーナーでナビゲーターもしてもらってるよ」

 「……よろしく」

 「あ、はい、よろしくです」



 「で、最後に、さくらも多分初対面だと思うけど、話は随分してると思う。
  普段この卯月家の収入を賄っているタンス卸売り業、その卸先の商人である『とうか』ちゃん」

 「とうかです、宜しくお願いしますー」

 「あ、なるほど、たんす売りのお方だったんですね。
  初めまして、お噂はかねがね聞いてます。宜しくお願いします」

 「よ、よろしくです」



 「んじゃ、こっちも準備したらすぐに出立しようか!」

 「はいです!おんせんわくわくです!」



紹介も一通り終えたところで、こちらも急いで出立の準備を始めます。






 「じゃ、行ってくるねー」

 「行ってらっしゃい、気を付けてきてくださいね」

 「みゅうみゅう!!」


 「……ん?ああ、言い忘れてたけど」



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 「水陸はティラミスとお留守番ね!」


 「み、みゅう!?!?」


 「仕方ないじゃない、私忙しすぎてろくすっぽ大掃除も出来てないんだから。
  それに、うちの風呂ならまだしも、温泉宿の温泉にイモムシが入ってたら衛生上怒られちゃうかもじゃない。
  ティラミスと仲良く溜まった家事こなしててね!」

 「み、みぎゅぅ……」




裏でそんな悲しき話が繰り広げられていたりもしたのですが、
宿への道中は特に問題もなく、




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無事、宿へとたどり着くことが出来ました。
周りには何もない、秘境とも呼ぶべき奥地にひっそりと建つ木造のお宿。
年季を感じさせる佇まいの中、煙突から漏れ出す湯気に、否が応にも期待が高まります。




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宿の内部は広々とした空間が広がっていて、非日常感を存分に満喫できる造りに仕上がっていました。
和風情緒あふれる囲炉裏が目を引きます。




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 「いらっしゃいませー、ご予約されておりますでしょうか?」

 「卯月です、7名で予約していたと思うのですが……」

 「はい、卯月様ですね、お待ちしておりました」



ご主人がチェックインしている様を、珍しそうに眺める二人。
むしろ珍しい人魚の従業員さんにも興味津々といったところでしょうか。
後ほど、みずながマロンにマーメイドについて質問攻めにあっていたのは言わずもがな。


チェックインを済ませたご主人は、そのまま宿の案内や今後の予定について皆に伝えます。
部屋は通路を通った先に用意されていること。
この宿には、エントランスから見える階段を上った先にある内風呂と
部屋の近くに別途入口がある露天風呂の2種類お風呂があり、
内風呂は深夜で閉鎖、露天風呂は一日中解放されていること。
夕飯はそこの囲炉裏にて焼き魚と土鍋料理がふるまわれるということ。

そしてそれらを詳細に説明し終えたところで、



 「それじゃ早速、お風呂の様子を偵察がてら入りに行こうよ!」



と、私たちに告げたのでした。






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 「むー、この旅は温泉が目当てなんだから、皆も来ればよかったのにー」

 「まあまあ、皆さん長旅で疲れていると思いますし、ゆっくり荷解きされたいのでは……」

 「まったく……普通常識的に考えて、まずは宿に着いたらのんびりするんじゃない……?」



そんな会話をしながら、内風呂の暖簾をくぐる私たち4人。
結局、先に部屋を見たいというキリカさん達と私たちは、一時的に分かれて行動することになったようです。




 「わうわう!でもボクは真っ先におんせんに入りたかったです!」

 「わうわう!私も一刻も早く温泉に入りたかったです!」

 「……ご主人……」



ご主人の似せる気のないマロンの真似に、些か呆れたみずなさんの声を聞きつつ、
もしかしたら多忙なご主人のために、家族水入らずの時間を作ってくれたのかも、なんてちょっと思いながら、
私も3人の後を追いかけます。




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 「すごいです!「おんせん」なのに、ベッドがあるです!」

 「おーー、脱衣所に涼める場所があるなんて素敵だねー」




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 「わふーーー!!「おんせん」ですーーー!」

 「うわー、内風呂なのにこの充実感、素敵すぎる……!」



マロンと一緒になってはしゃぐご主人に苦笑しつつ、
それでも二人につられて心の中は浮かれている私がいました。

私も随分前、ECOタウンの温泉にはご主人に連れて行ってもらったことがあったのですが、
あそこのような大規模かつ洋風(?)な雰囲気ではなく、
こういった小ぢんまりとしつつ、古き良き和の赴きがある温泉も、また良いものです。

と、そんなことを考えていると、ついに羽目を外し過ぎたマロンが、



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\ばしゃーん!!/

と、服のまま飛び込んでいたりしたのですけれども。



 「こーらーっ!!!」




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 「温泉もお風呂と同じ!服のまま入っちゃダメ!」

 「そ、そうなんですか?」

 「ま、まあまあみずなさん、固いこと言いっこ無しで……」

 「ご主人もご主人だよ!何で止めなかったの!?」

 「ふっ……あんな嬉しそうなマロンを止めることなんて……この世界の神でも果たして出来るかどうか……」

 「じゃあ神を超越してでもいいから止めてよ!!」



みずなさん無茶を言うなあ……なんて思いながら
正直にいうと、この世界のシステム的な意味でマロンは服を脱げなかったんじゃ
なんていうメタ的なツッコミを飲み込みます。

後、ご主人も浮かれすぎて靴とか脱ぎ忘れてる所、突っ込んだ方が良いんでしょうか?




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 「はふーーー」

 「わふーーー!」

 「いやぁー、生き返るなあー」

 「? ご主人様は今まで死んでたですか?」

 「あーー、うん、忙しくて死んでたって言ってもいいかもー」

 「わふー、おんせんってすごいですー!
  じゃあボクもおんせんの効果をもっと受けるですー!ぶくぶくぶく……」

 「溺れないようにねー」



こうして、私たちは内風呂を心行くまで満喫したのでした。



 「ぶくぶく……ぶく……」

 「あれ?マロン?……マローン!?!?」






さて、内風呂を堪能した私たちは、その足で露天風呂にも足を運びます。
一旦宿へと戻り、再度外へと移動しなければならない宿の構造上、
若干湯冷めしかけた私たちの前に現れた3つの大きな石風呂は、まさに壮観の一言でした。



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 「わふーーー!おんせんがいっぱいあるですー!!」

 「近くにあると思ってタオル巻いたまま来ちゃった超寒い早く入ろう超寒い」

 「あ、あはは……」



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 「ふぅ……実は温泉は初めてだったけど、これは気持ちいいなあ……
  アミスや学校の皆とも一緒に来たいなあ……
  あっ、雪だるまがある。ひょっとしてあのマーメイドさんが作ったのかな?」




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 「わふーーー!外で入る「おんせん」は、より楽しいですーー!」

 「そだねー。外だと外気温と湯との温度差が心地よいというのもあるけれど、
  やっぱり雪や景色も一緒に楽しむことが出来るのが、露天風呂の大きな魅力だよね」



ご主人の言うことはもっともで、内風呂は内風呂で確かに静かで良いものなのですが、
露天風呂は内風呂にない解放感と気持ち良さがあって、旅の疲れをすこぶる癒してくれるものでした。

ところで、ふと思ったことを私はご主人に聞いて見ることにしました。



 「……ところでご主人、内風呂には男湯女湯とありましたけれど、
  露天風呂には男湯女湯ありませんでしたよね。
  まさかとは思いますけれど、男の方とか入ってきたりしないですよね……?」

 「大丈夫大丈夫、この世界は男女比が全然違うし、遭遇する確率は低いから」

 「そ、そういう問題ですか!?!?」

 「ごめん冗談。本来は男女で使える時間は決まってるよ。
  ただ、今日この宿は私たちだけの貸切になっているから、心配いらないってこと」

 「な、なんだ、そうだったんですね……」



後顧の憂いが無くなったところで、私はマロンには聞こえない声で続けます。



 「ところでご主人、例の件についてですけど、予定通りにいけそうですか……?」

 「ん、そうだね。内風呂と外風呂が離れていたのは予想外だったけれど、これはこれで活用が出来そうだし、
  当初の予定通りで問題はないかもしれないね」

 「じゃあ動くのは予定通り……夕食時、ですね?」

 「そうだね。宿の人とも話さないといけないけど、とりあえず夕食時までは普通にしておけば大丈夫」

 「分かりました。じゃあそのように……」



そんな密談などつゆも知らないマロンは、初めての温泉を本当に満喫していました。



 「ご主人様!そっちは何が浮いてるですか?」

 「ん、こっちはゆず湯だね。ゆずっていう果物が浮いてるんだよ。いい香りー」

 「わふ、不思議なのです。そっちに行ってもいいです?」

 「ばっちこーい」






さて、露天風呂も満喫した私たちはその後、部屋に戻りキリカさん達とも合流し、思い思いに宿を満喫しました。
ただ、ご主人だけは持ってきていた仕事を必死にこなしていたようですが……。

そうして、夕食時となりました。



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 「んん~!おいしいなあ!ティラミスは料理は上手なんだけれど、基本洋食だからねえ。
  久々に食べる和食ってとっても摩訶不思議!」

 「ご主人、ミニーのマネしてます?」

 「そ、そんなことないのよぅ!」

 「はいはい」



いつもの如く漫才をしだすご主人をしり目に、キリカさん達はキリカさん達で料理を堪能していました。




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 「……おいしい」

 「ホントだねー。鮭がほろほろと口の中で崩れるし、ネギや白菜は甘くてもう最高だね!」

 「寒い季節だからこそ余計に鍋がおいしくなりますよねー。
  というかこの味は味噌だけで出せるのかな……ちょっとレシピ教えてもらおうかしら」

 「これってなんていう名前だっけ。すとーん……はんと、だっけ?」

 「あれ?そんな名前でしたっけ?」

 「……くすっ、すとーんはんと……」

 「え?あれ?違う?確かそうだと思ったんだけどなあ……」



そんな和気あいあいとした会話が繰り広げられている中、
マロンはというと、ひたすらがつがつと焼き魚や鍋を食していました。



 「そんなに早く食べるとむせちゃうよ?」

 「大丈夫です!はぐはぐ」

 「だよねー。こんなにおいしいし、気持ちはよく分かるよ。
  私も事前にきのことかそういった類のもの抜いてもらったから、
  摘出手術とかせずにがつがつ食べられてとてもハッピー!」



元来きのこ嫌いであるご主人がそう言い放つと、
たんす売りのとうかさんが、商人柄不利益を嫌うのでしょうか。眉を顰めながら言いました。



 「むー、鍋にはきのこが欠かせないのに、なんだかこっちとしては損した気分ですよ……」

 「ん、確かに。まあ食べられない人がいるなら合わせざるを得ないとは思うけどねー」

 「……不服、かも」

 「不服と言えば」



そう切り出したとうかさんは、箸を置き一拍置いてからご主人に向き直りました。



 「最近とんとたんすを回してくれないじゃないですか。
  いくら多忙だとはいえ、こちらもそれで生活を回しているわけですし、
  どうにかしていただきたいんですけれども」

 「いやー、そうはいってもこっちは満足に露天市場を回る事も出来てないしねえ。
  たんすの材料に至っても、全く買取が出せていないから資源が枯渇状態で……」

 「そんな事は十分分かっているんですけれども、それでもあまりにも取引がない状況ではないですか?」



楽しい食事の場が若干不穏な空気になりはじめたのを察知したキリカさんが、会話を遮ります。



 「ま、まあまあ。遥ちゃんが忙しいのは仕方のない話だし。
  私やチルちゃんにしても、この頃全然取材が無くてそれはそれで困ってるけれども、
  ブログ自体前みたいな更新頻度でやれていないみたいだし、遥ちゃんが落ち着くまで待ってあげようよ」

 「……でも、私たちも」

 「チルちゃんストップ!」

 「もが」



チルハさんの口をふさいだキリカさんは、つとめて場が明るくなるよう作り笑いをしながら、ご主人に告げました。



 「そ、そーだ!遥ちゃん原稿まだ終わってないんじゃないの?
  もう結構夕ご飯で時間費やしちゃってるけど!」

 「ん、あ、そうだね……」



場の空気を読んだご主人が立ち上がりながら言います。



 「まあ、取材についても取引についても、
  現状こんな状況になっているのは申し訳なく思っているし、いずれは改善したいと思ってる。
  ただ、今は正直他のことで手一杯で、そちらまで手が回らない状況なんだ。前にも伝えたけれどもね。
  だから本当に申し訳ないんだけれども、現状維持させてほしいかな」




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 「んじゃ、早く多忙が解消されるように、私はちょっと山積みの処理案件を片付けてくるね」



そういうと、ご主人は一足先に部屋へと戻ってしまいました






 「……ごめんね、せっかくの夕食だったのに」

 「い、いえいえ、すいませんうちのご主人がいつもご迷惑かけていて……」

 「ごめんなさいです」

 「ううん、私もちょっと言い過ぎたかもしれません。
  ごめんなさい、あなたたちの主人にいろいろ言ってしまって」



案の定悪くなってしまった空気や、そんな謝罪合戦を払しょくしようと、
私はとある提案をしてみることにします。



 「そうだ、よかったらこの後一緒にお風呂でも如何ですか?
  先ほどはご一緒出来ませんでしたし、ご主人は仕事で一緒に入れそうにないですから。
  みずなさんもマロンも、それで良いよね?」

 「あ、はいです」

 「そっか。ならお言葉に甘えて、一緒に入ろうかな?」

 「そうですね、先ほどは入れませんでしたし」



そういうわけで、私たちは夕食後一旦部屋に戻った後
腹が少々こなれてから集まり、一緒にお風呂に入る、という約束をしたのでした。






そうして、囲炉裏で解散してから約15分後。
私たちは同じ囲炉裏端で落ち合い、まずは内風呂へと向かいました。




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 「遥ちゃん、どうしてた?」

 「えっと、私たちが部屋に帰った時は部屋にいませんでしたね」

 「そっか。それじゃ気分転換で露天風呂にでも行ったのかな」

 「やっぱりボクは、ご主人様と一緒に「おんせん」に入りたかったです……」

 「ご主人は忙しい身なんだし、1度は入ったんだからいいじゃない」



そんな会話をしつつ、私たちは思い思いに浴場へ。




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 「浴槽に入る前に、まずはシャワーで体を洗ってからでないと……」

 「……ふぅ、きもちいい」

 「ですねー、効能もいろいろあるみたいですし、温泉さまさまですねー」



そんな会話をしていると、マロンとキリカさんがこんなやり取りを始めました。




 「わうわう、「おんせん」は楽しいですけど、あんまり浸かるとつらくなるです、何故ですか?」

 「それは『のぼせちゃう』からだねー」

 「『のぼせる』ってなんですか?」

 「簡単に言うと、あったまり過ぎちゃって体がついていけなくなっちゃうって感じだねー」

 「あったまりすぎるといけないですか?」

 「そうだね、何事も適度にってことだね」



そんな会話を聞いていたチルハさんが、横からちょっと付け足します。



 「……でも、この温泉はちょっと熱いかも」

 「ん、そうなの?じゃああれだ、最終手段!」

 「シャワーの水でも入れるんですか?」

 「それじゃ芸がないし、ここは……」



そういうと、キリカさんはおもむろに床においてあった桶を持つと、



 「ここは、外の雪でも持ってこようかと!」



といって、雪を集めに外に出てしまいました

そして5分後。



 「おー、ひんやり冷たいのとあったかいのが混ざって、とっても不思議です!」

 「でしょー。雪がある温泉宿ならではだよねー」



キリカさんが桶いっぱいに持ってきた雪は適度に温泉を冷やし、
マロンはキリカさんの心遣いに大満足していました。






その後、私たちは露天風呂にも足を運びます。



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 「おー、すごいですねー、こんな立派な露天風呂があったなんて!」

 「そうなんですよ、3種類すべて違う湯というのがまた素敵で!」



皆が皆、素敵な露天風呂に心躍っている、そんな中。
みずなさんだけは、とある場所をみて不思議がっていました。



 「あれ……?こんなに雪あったっけ……?






そうして、再度の露天風呂を堪能した私たちはその後解散し、それぞれの部屋へと戻りました。
マロンはキリカさんたちと朝風呂を一緒に行く約束をしていたらしく、ご主人にもそれを誘おうとしたのですが、
ご主人が未だ部屋に帰っていないことに気付き、些かしょんぼりしていたりしました。
そんなマロンを、「きっと囲炉裏らへんで静かに仕事をしているんだよ」などと言ってなだめさせ、寝かしつけます。


そして、翌朝。






























 「え?……ご主人様?」

 「う、うそ……」













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 「……死んでる、ね」

 「い、いったい誰が……」




ご主人は、露天風呂に浮かんだ形で、発見されたのでした。






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 「ど、どうして……?」

 「わ、分からない、分からないけど……」



おろおろしだす二人。
しかし、その声すら全く聞こえてきていないマロンは、まだ現実を受け止めきれずにいました。



 「ごしゅじんさま……?
  おきて、おきてください、ごしゅじんさま」

 「……」

 「こんなところでねてたら、かぜ、ひきますです。
  おきてくださいご主人様」

 「……」

 「ごしゅ……」

 「……」



いくら呼びかけても、全く反応を示さない、憧れにして最愛の人。




 「ご、ご主人様は助かるですか!?」

 「……残念だけど、もう……」

 「でも、かーでぃなるってひとならきっと蘇らせてくれるです!」

 「マロンちゃん、完全に息を引き取った人は、いくらカーディナルでも生き返らせられないんだよ……」

 「そうだ!」



下を向き、涙をこらえながら発言していたマロンは、わらにもすがる思いで顔を上げます。



 「ご主人様は昨日温泉に入って生き返ったって言ったです!
  温泉に入れてあげるです!!」

 「マロンちゃん!!」



キリカさんが出した少し大きめの声に、びくっと反応したマロン。



 「もう……もう、休ませてあげよう。……ね?」



こらえていた涙が、ついに溢れました。



 「うそです……うそです、うそですうそです嘘です!!
  ご主人様が死んじゃうなんて、そんなのウソです!!!」

 「……」

 「ご主人様はマロンにいっぱいいろんなものをくれたです!
  なのに、マロンはまだご主人様に『ありがとう』を言ってないです!!」

 「……」

 「ダークフェザーちゃんが言ってたです。感謝の言葉を言えないものは馬鹿だって。
  ボクは馬鹿なバウでした。
  でもいっぱい勉強して、ご主人様のもとに来て、馬鹿なバウじゃなくなったです!!
  それなのに……それなのに、また僕は馬鹿なバウになっちゃうですか!?」

 「……………………」



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 「いやです!!いやですいやです!!!
  ご主人様にありがとうを言えないなんて嫌です!!!
  ご主人様に褒めてもらえなくなるなんて嫌です!ご主人様の笑顔が見れなくなるなんて嫌です!!
  ご主人様がいないと、どうやって笑えばいいのか分からないです!!!」

 「ね、ねえ、ちょっとさすがに……」

 「」

 「ご主人様は最近すごく忙しそうでしたです。
  いつか倒れちゃうんじゃないかって心配だったです!
  でも、本当に死んじゃうなんて、聞いてないです!!!」

 「……だって」

 「心配されてるんだねー。もうちょっと、自分を気遣う周りを考えてみようよー」

 「」

 「ご主人様にもっともっといろんなことを教えてもらって、マロンは賢いバウになるんです!
  賢いバウになって、マロンは……マロンは……」

 「……え?」

 「……お?」

 「」

 「ご主人様のお嫁さんにな」

 「うんちょっとさすがにそれはですねマロンさん」




さすがに良心が痛み過ぎたのか、がばっと起き上がるご主人。




 「性別が違うからさすがに無理が……」

 「……ご主人……様……?」

 「………………あーーー、うん、まああれだね」



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 「てへぺろーーーーーー!!!!!!」

 「ご主人様ーーーーーー!!!!」



自分がダマされていたことなどさっぱり意識の外に、喜びのあまりご主人に抱きつくマロン。



 「……ふぅ」

 「さすがにこれ以上は良心が痛むし、私も話を合わせられなかったよ」

 「うん、もう十分すぎるほどだったよ。ありがとう」

 「……?
  どういうことですか?ご主人様」

 「えーっと、ね」



抱きついていたマロンを引きはがすと、中腰になるご主人。



 「マロンはサンタクロースに『探偵になりたい』ってお願いしたでしょ?」

 「そ、そういえばしてたです!」

 「でしょ?
  で、ちょっとサンタクロースと知り合いなんだよね私」

 「そ、そそそそうなんですか!?!?」

 「まあ、良くも悪くも素敵ブロガーっていうのは顔が広いんだよ」



……ここ、突っ込むところ?



 「でね、サンタクロースはちょっと一人だけでは叶えづらい願いだったから、
  私たちに『マロンが探偵になれるように』動いてくれないか、って頼まれちゃってね」

 「そ、そうだったんですか!!」

 「うん。それで温泉宿のチケットも貰ったんだよ」



本当はご主人の知り合いの知り合いの知り合いさんに、無理言って1日貸切にしてもらったんですけどね。
心の中でそんなツッコミをしていると、ご主人は改まってマロンに向きなおしました。



 「さて、名探偵マロンさん」

 「は、はい!なんですかご主人様!」

 「嘘だっていうのはバレちゃったけど、もし仮に私がここで死んじゃっていたら、と仮定しようか」

 「はいです」

 「探偵になりたいマロンさんは、どうするのかな?」

 「……」



さっきまでの泣き顔をキリッとさせて、マロンは告げました。



 「ご主人様のために、名探偵になるです!!!」

 「おー!頑張ってこの難事件を解決してね!」

 「はいです!!」






そういったわけで、当初の予定より早くウソが露呈してしまったので、
ご主人が急きょ皆さんを露天風呂まで集めました。



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 「それでは、名探偵マロンさん!」

 「はいです!」

 「この後開示予定だった情報をまず言っておくね」

 「ばっちこいです!」

 「私の死亡推定時刻は、昨日の午前9時ごろ。
  つまり、マロンたちが夕飯を食べおわった10分後ぐらいってところだね」

 「なるほど、了解です!」

 「それから、死因は鈍器のようなもので殴られた事による失血死。
  死体には争ったような形跡はほとんど見られなかったけれど、
  現場に何かを引きずったような跡はちょっと残ってる」

 「なるほどです!」

 「後、従業員さんからの証言も伝えておくね。
  『昨日、内風呂から皆さんが出た後、すぐに鍵をかけて出入りが出来ないようにしました
  その後から死体発見に至るまで、エントランスを通った人はいませんでした
  また、宿の入口となる飛空庭の人数カウントは、昨日私たちが来た後から変わっていませんでした』
  だそうだよ」

 「分かりましたです!」

 「それじゃ、その証言をもとに、いろいろな人から事情聴取をしたり、現場をつぶさに観察したりして、
  事件を解決へと導いてみようか」

 「ガンバリマスです!!」



こうして、マロンの探偵パートが始まったのでした。




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 「まず、キリカさんです!」

 「お、いきなり私?いいけどー。
  まず、事件当日は夕飯をみんなで食べた後、部屋にもどってお茶を飲んでたよ。
  その後皆と合流して、お風呂に入りに行ったね。もちろん、マロンちゃんも一緒だったから分かると思うけど。
  お風呂を回った後は解散して、そのまま寝ちゃったね」

 「なるほどです」

 「遥ちゃんには……実は、最近めっきりブログの出番がなかったから、そこはちょっと不満だったかなあ。
  もっともっとグラディエイターの二刀流を広めたいと思っていたんだけどー。
  ……っていう演技をしてって台本にあったからその通りに演じてみたんだけど、どうだったかな?」

 「ぜ、全然わからなかったです!!」

 「あ、ちなみにいまここで言っちゃうと、夕飯時の不穏な空気はあれ全部演技だったからね!
  むしろ私すごいイヤミ言って立ち去ったけど、本当に糾弾されてたら平謝りしかしないし!」

 「……私も、演技だった」

 「実は私もなんですー。一応たんすがなくてもフィギュアで成り立つ仕事ですしー」

 「皆さん演技だったんですか!すごいです!!」

 「まあでも、事件ではあれらは本当だったと思って考えてね」

 「はいです!」




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 「次はチルハさんです!」

 「……ん。
  ……えっと、事件のあった日は大体キリちゃんと同じ。
  ご飯食べて、部屋に帰って、皆とお風呂に入って、寝た」

 「ふむふむ」

 「……ブログの出番が最近ないのが、さびしいかな。
  後、ご飯食べた後、ちょっと宿の外観みたくて、宿の外にちょっと出てたけど、別段変わったことはなかったかも」

 「なるほどです!」



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 「えと、次は……」

 「ねねマロン、私にも聞かないの?」

 「ご主人様ですか?ご主人様は死んじゃってるんじゃないんですか?」

 「死んでても話せるセリフって、実はあるんだよね」

 「そうなんですか!?
  じゃあ、聞いてみるです!!」






 「返事がない!!
  ただのしかばねのようだ!!」


 「……?」

 「返事がない!!
  ただのしかばねのようだ!!」


 「えっと、ご主人さm」

 「返事がない!!
  ただのしかばねのようだ!!」


 「ご主人、ちょっと」



こってりみずなさんに絞られるご主人でした。




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 「次はとうかさんです!」

 「はーい。
  といっても、私も殆ど皆と同じでしたよ。
  唯一違うのは、夕飯後私はちょっとお腹が痛くなったので、トイレに籠ってたってことですか」

 「トイレにですか、大丈夫だったですか?」

 「はい。その後温泉に行く間には直ってました。
  あと、ちょっと風のうわさで聞いたんですけれど、チルハさんってイレイザーじゃないですか。
  私みたいなしがないロイヤルディーラーには到底真似できない、クローキングって技をお持ちのはず。
  あれを使えば、きっと気づかないように一人で移動が出来るはずですよ」

 「確かにそうかもです……」



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 「じゃあ次はさくらさんです!」

 「私の番ね。えーっと、基本的にはマロンと同じに動いてたよね。
  別段変わったこともしてなかったはず」

 「確かに、さくらさんとみずなさんは部屋までずっとマロンと一緒だったです」

 「だよね。証言に嘘をついてて、本当は夜中に抜け出したりしていない限り、
  マロンの目から離れる時間はなかったはずだよ。
  あ、そうそう。凶器はまだ見つかっていないんだって。
  もしかすると犯人はどこかに隠したり、あるいはまだ手元に隠し持っていたりするのかもね」

 「なるほどです!」




 「最後に、みずなさ……



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  「返事がない!!
  ただのしかばねの」




ずるずる




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 「ふぅ……最後は私ね。
  私もさくらさんと同じように、マロンと常に一緒にいたよね。
  まあこれはマロンが万が一隠れていたご主人を見つけないように見張ってたってのもあったんだけど……」

 「そ、そうだったですか!」

 「まあマロンが素直で助かった、かな?
  そうそう、不思議なことはちょこちょこあったよ。
  夕飯の後に露天風呂に来たら、なんか雪が積もってたんだよね。
  外は大雪だったし、木の下だったから雪が落ちてきただけかもしれないけれど……。
  にしても量があったと思うんだよね。
  あと、昨夜と比べて、露天風呂がちょっと温かったかも」

 「ふむふむ、了解です!」



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 「どう?何か掴めそうかな?」

 「うーーん、まだわからないです……」

 「そっか。じゃあいろいろとヒントを上げようかな。
  まず、この旅行は突然決まったものだったから、誰かが前々から準備して犯行に及ぶのは難しかったかもね」

 「確かにそうです、突然だったです」

 「あと、問題になるのは『私の死亡時刻』についてだね。
  私の死亡時刻って私が言うのもすごいおかしな話なんだけど、それはまあおいといて。
  基本的に死亡時刻にアリバイがない人は、複数いたよね?」

 「いましたです!さくらさんとみずなさん以外です!」

 「そうだね。なら犯行が出来たのは基本的にその時アリバイがなかった人物だね。
  さらに言えば、犯行が出来た時刻は夕飯から集合までのわずか15分
  突発的な犯行にしろ計画的な犯行にしろ、15分で出来ることは限られてるよね。
  もちろん、その後に皆の目を盗んで出かけた人がいたなら、その限りではないけど。」

 「そうかもです!」

 「後は……不思議なのが、皆が露天風呂に来たときだよね。
  本来その時私は既に死んでいたけれど、その時はどこにも私はいなかったよね」

 「誰もいませんでしたです!」

 「不思議だよねー。まあ犯人は突発的に犯行に及んでしまったのかもね。
  私たちじゃない第3者の犯行と見せかけたかったんだろうけれど、
  飛空庭のカウント数については頭になかったみたいだし、
  こんなに正確に死亡推定時刻が割り出されるとも思ってなかったみたいだし。
  ……っとまあ、こんなところかな?」

 「了解です!」

 「じゃ、最後に出題者からの最大のヒントね。
  その職でしかできない事柄を、事件にちょっと取り入れてみたよ。
  グラディエイターの神速斬りは、離れた場所からでも敵を倒せる
  イレイザーのクローキングは、人の目を盗んで移動が出来る
  ロイヤルディーラーのスキルは、重たいものを楽々運べる
  逆に言えば、これらのことは他の職にはできないことだと思ってもらってもよいかも。
  これが最大のヒント、だね」

 「分かりましたです!
  じゃあ、ちょっといろいろとみてくるです!」

 「がんばってねー」




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 「ご主人様が浮かんでた温泉です。確かにちょっと温いかも、です。
  入るには問題ないぐらいですけど」




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 「そういえば、なんであそこに火なんてあるんですか……?」




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 「わふ、雪だるまです!
  なんか増えてる気がしますです!」







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 「ご主人様!名探偵するです!!」



一通り現場を調べたマロンが、皆を一堂に集めました。



 「それじゃーどんな答えにたどり着いたのか、マロンさんの考えを聞かせてもらおうかな」

 「本当に大丈夫?もう一度じっくり考えたほうがいいんじゃないかな?」

 「大丈夫です!事件はばっちり解決です!!」



みずなさんの心配する声を制して、マロンは皆と向き合います。



 「まず犯人は……」

 「犯人は…………?」





 「キリカさん達、3人です!!」

 「……」

 「どうしてそう考えたのか、理由を聞いてもいいかな?」

 「はいです。
  まずキリカさん達やとうかさんは、ご主人様と仲が悪かったです」

 「そうだねー」

 「実際は関係すこぶる良好だけどね。こんなことも頼んでしまうぐらいに」

 「それで、3人はご主人様と仲良くなりたいと思ったです!
  それで、夜中にご主人様を呼び出したです!」

 「ふむ」

 「そして……」



勿体づけたマロンは一拍置いた後、にこやかな笑みで叫んだのでした。











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 「そして仲直りしたご主人様たちは、
  一緒に雪だるまを作ったです!!」




 「…………えっ」



みずなさんの漏らした声が、ただ一人の例外を除いた、皆の声を代弁していました。




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 「いやいやいやいやマロン、それはちょっとおかしくない?」

 「そうですか?でも雪だるまが増えてたのはヘンです!
  あれはきっとご主人様たちの仲直りのしるしです!!」

 「いや、そういうわけじゃなく……」

 「みずな」

 「は、はい?」





 「めっちゃ正解じゃない、何を言ってるの?」



 「…………へ?」

 「ぶらぼーマロンさん!!見事名探偵となり事件を解決へと導きました!おめでとう!!」



ご主人の拍手につられて、私たちもつい拍手をしてしまいます。
皆の拍手に包まれて、マロンはとてもうれしそうでした。



 「ありがとうです!これで、マロンはまた一つ賢くなったです!!」






宿から帰る帰り道。
私はつい、先ほどの真意をご主人から聞いていました。



 「ご主人」

 「ん、なに?」

 「さっきのマロンの解答ですけど」

 「ああ、あれね」



マロンに聞こえない声で、ご主人がささやきます。



 「本来の正解じゃないことぐらい、私にもわかってるよ」

 「じゃあなんでご主人は……」

 「ねえさくら」



足を止め向き直ったご主人は、少し真剣な表情をしながらこう言いました。



 「確かにあの解答は、本来私が用意していた答えとは違うものだったよ。
  だけど……素敵な答えだったじゃない」

 「素敵な答え?」

 「もし私たちが仲直りをしていたら
  そもそも、私は殺されなかったよね

 「……あ」

 「ね?」



にっこりと笑ったご主人は、こう付け加えました。




 「大した名探偵っぷりだったじゃない。難事件もあっという間に解決だよ。
  正直脱帽したし、クリスマスらしいいいプレゼント(解答)を貰った気分だよ
  本人も、まあ途中信じ込ませすぎちゃったけれど、
  こちらのプレゼントを喜んでくれたみたいだし、めでたしめでたし……じゃない?」

 「……たしかに、そうですね」

 「でしょ?ホント、やさしいマロンなりの答えを聞けて、出題者冥利に尽きるといったもんだよ」

 「ご主人……。
  本当はマロンに答えを解かすつもり、なかったんですね」

 「ん。解ければ解いたでいいかなとも思ったけれど、もとより期待はしていなかったし、
  マロンならどう答えるだろうって期待して、ちょっとマロンには難しい事件にしてみたんだよね。
  ま、このブログの読者の方々には、ちょっと簡単すぎるぐらいだとは思うけど。
  特に庭師のかたがたには、ね」

 「ご主人、ひょっとして」

 「ん?なんのことかな~」



そういいながら又歩き出すご主人は、一仕事終えたかのような、晴れ晴れとした雰囲気が漂っていました。






 「そういえばご主人、宿で予定していた執筆は終わったんですか?」

 「…………それは永遠の謎にしといて…………」








ふぉおおお!!スイマセンこんな長くなると思ってなかったんですうううううう!!!
去年と同じく24日0時の予約投稿をと思って書き始めたんですが、なんと現在23時24分!!(驚愕
もうこれはあれですね、25日の投稿分にしちゃったほうがいいですね……;

いやあ、前回はとってもはーとふるストーリーにしちゃったというのもあって、
正直コレを超えるハートウォーミングなSSなんてかけるわけない!って、
実は12月半ばごろからすごい頭を抱えていたりしたんですよね。
結局今回もこのブログの知恵袋なお方に知恵をお借りして、
「メフィ回をブログで取り上げたのだから、
それにこじつけてマロンに探偵でもさせようか」なんて考え付いたわけだったのです。
いつもの如くちょっと修羅場に、最後ちょっといい話っぽく終われたらよいなとおもいつつ。

ただ、今回はどういった事件が起こるのか伏せようと思ったばかりに、
前回のような感じではなく純粋に卯月家の会話を書き連ねただけで終わってしまって、
なんだかとっても不完全燃焼感が否めませんね。ホント身内ネタみたいな感じで申し訳ない限りです。
最後の方は時間なさすぎて心理的描写とか全く書けませんでしたし。うおお。


さて、今回いろいろとお庭のSSがありましたけれども、
実はそのうちの2つのお庭は、なんと私のお庭じゃなく他の方のお庭だったりします。
というのも、私の心理的願望も含めて「温泉に入りたい、温泉で湯煙殺人事件したい」という欲求があり、
そんな素敵な温泉宿持ってないし自分で作るかーなんて思いながら
ダメもとで「温泉宿お持ちの知り合いいませんかね?」なんてRチャで発言したら、
なんと知り合いの知り合いの知り合いの方が2庭もお持ちだったということで、
急きょ撮影に協力していただけることになってしまいました。
しかもダメ元だったのでその時全く事件については考えていなかったので、
その後急きょシャワー浴びながら事件のトリックとか時系列とかを考えたという急ごしらえ感。
さらに言えば、その際ずっと庭主さんには待ってもらったという申し訳なさ。

本当に申し訳ございませんでしたああああ!!

撮影に関しても結局2hぐらいかかってしまいましたし、もうほんと感謝と謝罪の念でいっぱいです。
しかも聞けば私が最近ちょくちょく顔を出し始めた奈落PTで、実はご一緒していた方だったと言う事で(!?)
もうこの恩は1秒でも早くダメマをバクバクに入れることで返すしかないなと思う次第でございます(?

快く庭の撮影許可を出していただいただけでなく、
本当に長時間撮影に協力してくださってありがとうございました……。
また仲を取り持ってくれた方々や、
撮影協力してくださった方々にも多大なる感謝の念を述べさせていただきたいと思います。
出来た記事がこんな稚拙で本当に申し訳ない限りではございますが、本当にありがとうございました。
ていうか今年度一番ハートフルな出来事だったといまさらながらに思います、はい。



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ていうか、撮影させていただいてすごく感じたんですが、
露天風呂もさることながら、内風呂のこの完成度がすさまじかったです。
木の塀をここまで見事に用いて、空間を上手に仕切るこの技法は今までに見たことがありませんでして、
撮影抜きにほえーーって声が出てしまいました、はい。
こんな素敵な庭で殺人事件が起こって本当に良かったんでしょうか、未だに謎です(




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あ、あとこっちの庭は私がECO始めた直後ぐらいに作ってた温泉宿(未完成)です。
設置数の関係でなかなか部屋の表現がうまくいかず、結局投げちゃったんですよね。
今回撮影に使おうかと思って、急きょ撤去していた家具を戻したりなんだりしておりました。
ええ、ホントやっつけ感というか、急ごしらえなのが丸わかりですねゴメンナサイ。

今回の件もありましたし、やっぱり温泉宿私も一個ぐらい作ってみるかなあ……。
そんなことを考えながら必死に書いてて、
もう誤字とか表現のミスとか見直す時間がなかったやっつけ記事でございましたが、
お気に召せば幸いです。


ちなみに、解答は次回更新の記事にでも載せようかと思います。
本来25日0時に上げる予定だった記事ですけどね!!いったいいつになるやら!
嗚呼、ひっそりとクリスマスイブの夜を楽しむために買ってきていたシードルを今開けますよ……λ............



それでは、この記事をご覧の皆様が、
良いクリスマスを迎えられますように……!






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