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ゴミ箱記念日 前編

08:29




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つい先日まで入道雲が漂っていたのに、いつの間にかすっかり高く感じられるようになった、
そんなアクロニアの空の元。

まだ新築の香りが少し漂う飛空庭で、澄み渡った秋空とは対照的な、
少し不機嫌ともとれる無愛想な表情を張り付け頬杖を付いていたご主人は、
いつもの如く家事に勤しんでいた私のことをじっと見ていたのですが、ふと突然こんなことを言いました。



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 「ねえさくら」

 「何ですか、ご主人?」












 「服、脱がない?」














卯月家の日常



卯月家の日常、この企画は
卯月遥とその家族達の、平凡とは名ばかりの逸脱した日常を、SS風味で書き連ねてゆきます。
SSに耐性のない方は、他の記事へと避難して頂けると幸いです。


※ 当ブログは18禁でもなんでもなく、どの記事であろうとも
実際に脱衣などの卑猥な文章や画像が出ることはございません。









理解できずに数秒間固まりました。
服を………脱ぐ………?



 「ご、ご主人、それはどういう・・・」

 「どういうって、言葉通りの意味だけど?」



何か問題でも?と言いたげな表情を前に、私の頭はぐるぐる混乱します。



 「ご主人様、プールにでも行かれるのですか?」

 「ううん、言葉通りの意味だよ。プールなんてそもそもこんな日に入ったら風邪引くしね」



皿洗いの手を止め助け船を出してくれたティラミスさんにも、にべもない様子で返すご主人。
しかしそうはいってもはいそうですかと二つ返事するわけにもいかないので、とにかく探りを入れます。



 「さすがの私も、何が言いたいのかわからないよご主人。経緯や理由を言ってもらわないと」



すると、ご主人ははぁと小さくため息をついたあと、まじめそうな顔でこちらを向きました。



 「さくらってさ、いつもその服着てるじゃない」



確かに、私はいつも同じ赤いチェックの服を着ています。
でも元々それは私が実体を持たない体をネコマタハートという方法で
無理矢理人間の体にしているからであって、
好きでこの服をずっと着続けているわけではないわけです。

…まあ、ご主人が以前チェック柄が好きだと言っていたのを覚えていたからこそ、
チェック柄の服で擬人化したのではあるのでしょうけれど。



 「で、でも、私用の服って高いし、そもそもこの姿になった私をあれだけ気に入ってくれて、
  仕舞いにはお揃いの服まで買ってたのはご主人じゃない」


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 「うん、でもそうなんだけどさ」



と言って1テンポおき、すぅと息を吸い目を閉じたご主人。
少しドキドキしながら次の言葉を待っていた私は、斜め上過ぎた次の言葉に目を丸くしました。














 「よし、久々に大富豪でもしようか!」






 「えっ、えっ、ど、どういうことなの?」

 「だって脱ぎたくなさそうなんだもん」


 「べ、別に脱ぎたくないってわけじゃないけど、
  でも急にそんなこと言われるとどうしていいかわからないって言うか、
  そもそもティラミスさんとかがいる中で脱ぐのもって言うか、
  ああでも二人っきりの時ならいい訳じゃなくて、
  いやでもどうしてもっていうならやぶさかじゃないんだけども」



そこまで言いかけて、ふと気づくとあること。



 「…ご主人、もしや大富豪がやりたくて、そんなこと言い出した…?」



世の中には脱衣大富豪とかいうのもあるみたいですし、それにかこつけたのかも。
ぐぬぬー、またこのご主人は乙女心を弄んでー!

しかしそんな私の予想とは裏腹に、ご主人は



 「ううん、あーでも、まあそういうことにしておこうかな」



と煮えきらないような感じで一言。
いったい何を考えているのやらといった感じで、私はティラミスさんと顔を合わせます。



 「まあそれに、マロンに大富豪を触れさせてみるのもおもしろいかもしれないしね。うん、大富豪しようよ」

 「だいふごう、ですか?それは何ですかご主人様」

 「ああうん、おいしいスイーツなんだよー」

 「スイーツですか!マロン甘いもの大好きです!」

 「また適当なこと言って…」



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グリコポーズをするマロンを尻目に、ティラミスさんが苦笑。
その後ティラミスさんが簡単に大富豪の概要をマロンに説明している間に、ご主人はさらに



 「水陸は大富豪できないだろうけど、来る?」

 「みゅう!」



と水陸も誘ってしまい、私が良いも悪いも言う前に周りを固められてしまいました。



 「…で、本当に行くんですか?」



なぜか私もその気になりつつも、表面上は渋々と行った感じの発言をしたのを聞いたご主人は、
ようやく満足げな表情でこちらを向きました。



 「よし、それじゃさくらからも快諾されたことだし」











 「脱衣をかけた大富豪をしにいこうか」











ご主人から提案されたレギュレーションは、簡単に言うと



・対戦するのはご主人、ティラミスさん、マロン、そして私さくらの4人。

・ルールは全部ありの5回戦。

・私、ティラミスさん、マロンの3人チーム対ご主人という構図。

・一位になった人が所属しているチームが勝者となる。

・ご主人が勝った場合は、罰ゲームとしてご主人のお願いを私が叶える。
(厳密には私たちだけど、ご主人の口から予め「勝ったら私の服を脱がす」と伝えられている)
逆に私たちが勝った場合はご主人が水陸も含めた4人のお願いを叶える。





といった感じで、正直私にとっては
ティラミスさんたちを味方にすることが出来るというちょっと拍子抜けなものでした。




カードゲーム自体初めてなマロンと、それからおまけで水陸に対しての
デモンストレーション的な対戦とルール説明をした後、
ご主人はカジノテーブルを挟んで向かい側に立ちます。



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 「本当に、さっき言った条件でいいんですか…?」

 「うん、いいよ」



快諾するご主人を訝しみつつ、
それでもまだご主人と私たちとの公平さに気を揉んでいると、
ご主人は元々私が言いだしたことなんだし、大丈夫だよと一言。

それでもまだ納得がいかない私を前に、ご主人は



 「さくら、私は曲がりなりにも大富豪の攻略記事を書いた人間だよ?」

 「そ、そりゃあもちろん分かっているけど…」

 「ふむ、じゃあむしろこう言った方がいいかな?
  …確かに私は王家御用達の貿易商(ロイヤルディーラー)という称号と名誉を持ってはいるよ」



そういうと、ワンテンポおいてご主人は普段あまり見せない真剣な表情でこう言いました。



 「…でもこの場において、その肩書きは『王家の如き気品と知性を持ち合わせた、
  運の女神に祝福されしカードマスター』という意味に変わるんだよ?」


というと、どこに持っていたのか高そうな扇子を柄にもなく広げて言い放ちました。



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 「あなたたちの主人がどれだけすごいのか、たまには見せてあげないとね」








と豪語したご主人でしたが、正直その内容は散々でした。
2回戦を終えて今のところ連続大貧民。ちなみに私は今のところ都落ちもなく大富豪をキープしてます。
本人は「実際問題大富豪大会が最近開催されてないから久々だったんだよねー」と
頭を掻きながら悪びれもなく言い放つだけでなく、
「いやー、私少人数の大富豪は得意なんだけど、
大人数の大富豪は運が絡む要素が強いから少々苦手なんだよねー」等とまで言う始末。



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 「いやご主人、4人じゃ決して大人数とはいえないよ…」



と呆れながらつぶやく私を後目に、なぜかティラミスさんはニコニコ笑っていました。
富豪になれたのがそんなにうれしいのかとも思ったのですが、
ご主人とアイコンタクトをとっているあたりそれもなさそう。
ご主人が知らない間に何か不正でもしていたのかな…




…あれ?



 「…ご主人」

 「何?負け犬オーラまっただ中の私に、まだ何か傷をえぐるようなツッコミでも入れるの…?」

 「そうじゃなくて…さっきは最後にQと5と4ダブルを持ったまま、
  マロンに上がられてゲームが終了したんだよね?」

 「うん、そうだよ」

 「で、マロンは7を出して上がる前にJを出していて、そのときにご主人はカードを出さなかった…」



これはおかしい。
いきなり自分の話をされてマロンは混乱しているけれど、よく考えれば分かること。

つまりこの場合ご主人はQを出さなければ負けが確定なのに対し、Qを出していたなら勝ちの目はあったはず。
Qを出してマロンが出せず流れた場合、
4ダブルに手札1枚のマロンは対抗できず、その後に5を出すことで勝ち。

つまりここはQを出した方が絶対に良いはず。
ご主人ならそれは確実に分かっていたはずなのに、あえて出さなかった。
いやむしろご主人なら…相手の心理や手札まで読み切っていて、
Qを出せば確実に勝てることまで分かっていたはず。
なのにどうして出さなかったのか。


マロンを勝たせたかった?
確かにマロンは初心者の感じが抜けきれず、いまいちパッとした戦績ではないかも。
でもそれよりかは、むしろ…。



 「…ご主人。もしかして、今までわざと負けてたりする?」



一瞬ご主人がニヤリと笑ったのを、私が見逃すはずはありませんでした。



 「何故そう思うの?」

 「マロンが出したJに、Qを出さなかったから」

 「だってその後に残るのは4二つに5だよ?Qが無ければ心許ないじゃない」

 「確かにパッと考えればそうかもしれない。でもマロンの残りは1枚だけだよ。これはおかしくないかな」



 「………。」



ティラミスさんは相変わらずニコニコ笑っている。



 「…マロンに勝たせてあげたかったんだよ。
  マロンはかなり筋がいいとはいえまだ初心者だし、ふるぼっこは辛いじゃない」

 「マ、マロンに気遣って貰わなくても良いんですよご主人様!」

 「うん。マロンはそういう子だよ。そしてそれはご主人もよく分かっていたはず」



そういい放ってご主人に向き直ります。ご主人はいたずらがばれた子供のように照れ笑い。



 「ご主人、何故こんなことを?」

 「……ね、さくらちゃん。今日は何の日だか覚えてる?」



何故かご主人でなくティラミスさんが口を開きます。今日?今日って何かあったっけ…?
今日…………


…あ。









 「遅ればせながら…『誕生日』おめでとう、さくら」









元々猫として生きていた私は、その時の記憶をほとんど覚えていませんでした。
自分がいつどこで生まれたのか。どこでどのようにして最期を迎えたのか。
それを知ったご主人は、こう言ったことがありました。



 「じゃあさ、さくらと出会ったあの日を、さくらの『誕生日』にしようか」

 「…え?」



そういうと、少し遠くを見ながらご主人が続けます。




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 「ゴミ箱で にゃーんと君が 鳴いたから  10月8日は」



 「…ゴミ箱記念日?」

 「正解」

 「ご主人…」



真剣な雰囲気を台無しにする一言に呆れつつも、
それがご主人なりの照れ隠しなのだということを、私は重々承知していました。







そんなことを思い出していたのですが、ふととあることに気づきます。




 「ご主人、このゲーム勝つ気はあったの?」

 「一応はね。手は抜こうと思ったけど、手札如何によっては勝っちゃっても良いかなとは思ってた」

 「じゃあ、「服を脱ぐ」っていうのは…?」

 「それもまた、誕生日プレゼントだよ」



ど、どういうことなんだろう。きっとご主人のことだから、悪いことじゃないのだろうけれど。



 「…まあ、手を抜いていたことは認めるよ。真剣に戦いたかったのならごめんね」

 「ま、まぁ、それはいいけれど…。楽しんでいたし」



ティラミスさんやマロンも同意と言った感じ。
その様子に安心したのか、一瞬微笑んだご主人は、一転してさっき見せた表情よりさらに真剣な表情に。



 「でもばれちゃしょうがないし、ここからは本気でいくよ」

 「…『私が望む』プレゼントが欲しかったら、ご主人に実力で勝て…と?」



肯定の代わりに、ご主人はこれまでとは明らかに違う自信に満ちた面もちで、ふっと笑いました。





(続く)










何このカッコイイ卯月さん。どういうことなの(

でも、でもあれだけは解せなかったですね。
王家の如き気品と知性を持ち合わせた、運の女神に祝福されしカードマスター!!
自分で書いててとても痛かったです、はい。
でもまあこれは、冗談半分な卯月さんという表現なのですけれどもね。


ちなみにこの記事自体は元々前後編に分けるつもりではなかったのですが、
書いているうちにどうにも長くなったり、
どうにもこの後麻雀漫画っぽくなってしまったので、ちょっと分けさせて貰っております。
ふへへ、手に汗握るア○ギみたいな対決を書きたかっただけだったんや…。
でも恐らく無理なんや…。
ていうか、本来これ10月上旬に更新する予定だったのにどうしてここまで遅くなったんや…。


そんなわけで次の卯月家の日常の更新はいつになるか分かりませんが、
一応この続きを書く予定でございますです。


さてさて、卯月さんの真の意図とは。そしてその実力とは。
さらに、卯月家の面々がそれぞれの持ち味を生かし始めた第3回戦、まさに波乱の予兆…!?

乞うご期待あれ!





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